(2) 変法−1

本人の臀部をあまり高く持ち上げませんので、移動経路に障害物がないことが必要です。

したがって、使用する車いすのアームレストはデスクタイプ、または着脱できるものなどの条件があります。

「手順」

1)本人のお尻を前に出して座らせます。

2)移乗側の足を少し前に出します。(移乗の際にもつれないように。)

介助者の膝で本人の膝をロックします。

3)介助者は本人の頭を脇から出させ、本人の肩を介助者の腹部で受けるようにして支えます。

4)介助者は、本人の頭側の腕は内側から、反対側の腕は外側から回し、両手とも本人の大転子付近のズボンを持ちます。

5)ロックした膝を支点に、何度か本人をおじぎさせるようにして、本人の体重を読み取ります。

6)お尻を浮かせ、少しづつ何度かに分けて、ベッ ド上を車いす側へお尻を移動させ、その後、車 いすへ移乗させます。


[注意事項]

・移乗側は、外側より(上手で)お尻(座骨)を 持ちます。反対側(頭を出している側)は、脇 の下から手を入れます(下手で)。

・介助者の腕が短く、大転子附近を持てない場 合には、後述する変法2でおこないます。

・臀部のズボンをつかむという点が気にかかり ます。ズボンが裂けるなどの問題は起きない か、確認しておく必要があります。移乗動作 が終了後、ズボンが食い込んでいないか、し わが寄っていないか確認し、修正しましょう。

5)具体的な方法

(1) 基本法

この方法はCDROMに具体的な手順が収録されています(4.3M)

本人の膝を固定し、臀部を支える形で持ち上げ、回転させて移乗させる方法です。

基本法は自動車への移乗などに活用します。

「手順」

1)本人のお尻を前に出して座らせます。

2)移乗側の足を少し前に出します。(移乗の際にもつれないように。)

介助者の膝で本人の膝をロックします。

膝のロックは、介助者の膝をやや内股にしておこないます。

本人に対しての膝のロックは、左右とも45度くらいのつもりで内側方向へロックします。

膝の側方から固定しようとすると、以下の手順で臀部を引き上げたとき、本人の膝が前方へ逃げ、引き上げるための力が大きく必要になります。

前方から膝を固定することが容易に介助するための一つのポイントになります。


3)移乗側とは反対の本人の脇に介助者の頭を入れ、頭を少し起こし気味にします。

移乗先側の手を本人の脇に、反対側の手を本人の座骨に当てます。

4)ロックした膝を支点にして、介助者は腰を下ろし、本人をおじぎさせるようにして臀部を浮かせます。

5)介助者は移動距離が長い側(車いすから遠い側)の膝を押し出すようにしながら、本人を回転させます。

6)車いすに着座させるときは介助者は腰を落としながら、静かに着座させます。

[注意事項]

・座面高さが低いと、この基本法は介助者に負担が大きくなります。

・本人の脇の下に潜り込む形になるので、本人と比較して介助者が大きすぎると介助しにくくなります。

・本人の臀部がアームレストなどの障害物を越えられるだけは持ち上げなければなりません。このときに、膝折れを防止しながら、臀部を引き上げるようにしながら落下を防止する作業が必要になります。

・本人の脇に入れた介助者の頭は、やや起こし気味にして、本人が抜け落ちてしまうのを防ぐようにします。