原著論文 第2巻 第1号 2007年1月

マウスの坐骨神経切断後に生じる 足底踵部の褥瘡様皮膚損傷 print
小形 晶子 PT、栢原 哲郎 PhD(神戸学院大学総合リハビリテーション学部 医療リハビリテーション学科)
三木 明徳 MD,PhD(神戸大学医学部保健学科)

マウスの坐骨神経を切断すると、足底踵部に褥瘡によく似た皮膚損傷が高頻度で発生する。この原因を調べるために、マウスの左坐骨神経を切断し、その後の姿勢や歩行を観察してデジタルビデオカメラで記録するとともに、皮膚の損傷部を光学顕微鏡で観察した。なお、坐骨神経を切断していない右健側を対照群として同様の観察を行った。健側の足底踵部は静止時や歩行時において常に床から離れているが、坐骨神経を切断した側では静止時でも歩行時でも、足底踵部は常に床に接地していた。坐骨神経切断後5日目頃から、足底踵部に皮膚の発赤や表皮の剥離が始まり、7日後では足底全体に顕著な腫脹が全例に見られた。皮膚病変部を光学顕微鏡で観察すると、健側の同部位に比べて表皮や真皮が肥厚し、線維芽細胞の増加や球形細胞の浸潤が認められた。これらの形態学的変化は褥瘡でみられる病変と非常によく似ていた。今回得られた所見は、坐骨神経の切断によって足底踵部は常時圧迫された状態になり、そのために褥瘡に似た皮膚傷害が起こった可能性を示唆しており、褥瘡の実験モデルとして利用価値が高いと思われる。

キーワード:褥瘡、脱神経、褥瘡モデル、マウス