運動療法強度が前頭前野の血液動態に及ぼす影響 |
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松尾 善美 PT,PhD 春藤 久人 MD,PhD,中前 智通 OT,MS 森川 孝子 OT,山本 大誠 PT,PhD(神戸学院大学 総合リハビリテーション学部 医療リハビリテーション学科)
運動時には、判断や意思決定などを行う統合中枢として大脳皮質前頭葉の前頭前野はパフォーマンスを統括する指令所としての機能を司っており、行動を制御している。運動強度が低−中等度に上がると前頭前野の血流量が増大すると報告されている。本研究では運動療法の強度が前頭前野の血液動態に及ぼす影響について嫌気性代謝閾値を境にどのように変動するかについて検討することを目的とした。神戸学院大学総合リハビリテーション学部健常学生22名に、年齢・安静時心拍数より75%の運動強度で算出した目標心拍数まで20watts/分で漸増運動負荷した。その際、呼気ガス分析装置による呼気ガス関連指標と光トポグラフィー装置にて前頭部の脳血液動態として酸化ヘモグロビン量、総ヘモグロビン量を前頭部で測定した。両側ないしは一側のヘモグロビン量が増加した被験者は82%であった。AT到達時VO2,VO2/ΔWR,HR,VO2/HRはヘモグロビン量の両側・一側増加、減少の3群間で有意差がなかった。判断や意思決定に関与する統合中枢である前頭前野は、ATから75%運動強度までは漸増運動時に賦活されることが示唆された。それらに寄与する因子であるVO2、ΔVO2/ΔWR、呼気終末二酸化炭素濃度とトポグラフィーによる時系列データとの関連性をさらに詳細に検討する必要があると考えられる。
キーワード:運動療法強度、前頭前野、光トポグラフィー、血流動態、嫌気性代謝閾値 |