6)まとめ

・いずれの方法も膝の使い方がポイントになります。

・通常、人はどのようにして立つのか、座るのかなど、身体の使い方を知っていることが大切です。

・習得するのには時間が必要です。

・持ち上げないで少しづつ移乗していく方法(変法1・2)の場合の膝使いは、伝達していく際もさほど難しくはありません。

・変法1・2は腰をほとんど浮かせずに移乗させるために、膝関節の使い方のみ注意すれば、股関節の動きについては気にしなくてよい。基本法の場合は、股関節の動きについても考える必要があるために習得が難しいといえます。

・一般的には変法を使用していますが、アームレストの外れない車いすや、自動車への移乗の際には基本法が用いられます。

・リフト(ホイスト)が無かった時代には、これらに変わる方法論が無かったために用いられてきました。

・リフト(ホイスト)を使うにしても、知っておくべき方法ではあります。(緊急時や旅行などのために。)

・これらの方法は筋緊張度が低い人に対しての方がやりやすいといえます。

・介助者が小柄である場合には、変法1が有効です。ただし、手が届かなければ、変法2が容易になります。

小柄な人が大柄な人を移乗介助するのは不利です。

・膝の屈曲痙性が出る人(膝が曲ってきてしまう)の場合は、立たせない変法1、2を用います。

・一般に膝の屈曲痙性が出る場合には、足を伸ばし気味の位置に、伸展痙性が出る場合には、曲げ気味の位置に足を前もって置きます。(曲ってきても、伸びてきても大丈夫なように。)

7) 二人介助

・上体側の介助者はベッド側に位置し、ベッド上に足や膝をついて自身の身体を安定させます。

・上体側の介助者は、本人の脇から入れた手で本人の腕を掴み、脇を絞めるようにしながら、自分のお腹に押し付けるようにすると同時にお腹を突き出すようにして、本人を持ち上げます。


・本人の腕を上に引っぱろうとすると、肩甲骨の動き(可動域)によって力が上方向に逃げてしまい、本人を持ち上げられません。

・本人の腕は片方づつ持つよりも、両腕とも一緒に持った方が良い。

・上体側の介助者は、上体を後ろにそらし気味にして本人を持ち上げ、脚側の介助者はアームレストを飛び越えるようにして、本人のお尻を振り子のように振らせて移乗させます。

・脚側の介助者は、移乗の際につられて振られないように、自身の膝を伸ばしたり曲げたりして背中をあまり曲げないようにし、腰を上下させるようにして自身の姿勢を安定させます(守ります)。

『アレンジ』

○手順

1)上体側の介助者は、両脇から腕を入れ、本人の両腕を持ちます。

2)脚側の介助者は床に膝をつき(足先側の脚は立てる)、本人の脚と膝裏を持ちます。

本人の足の裏を介助者の立てた脚の太もも部分に着けて支えます。

3)上体側の介助者は両脇を絞め、手を自分のお腹へ押し付けると同時にお腹を突き出すようにして、自分のお腹に本人を密着させ、上体をそらすようにして本人のお尻を浮かせま す。

脚側の介助者は、それに合わせるようにして足側に引っぱり本人のお尻を前方に浮かせ、アームレストの前方から迂回するようにしてアームレストを越え、着座(移乗)させます。

 両側からの引っぱり(張力)によって、股関節が伸展され、腰が自然と浮くようになります。

(3) 変法−2

この方法はCDROMに具体的な手順が収録されています(3.8M)

前述した変法−1の方法では、介助者が本人の臀部まで手が届かない場合などに利用します。

本人の臀部をあまり高く持ち上げないので、移動経路に障害物がないことが必要です。

したがって、使用する車いすはアームレストが着脱できるなどの条件があります。

「手順」

1)本人のお尻を前に出して座らせます。

2)移乗側の足を少し前に出します。(移乗の際にもつれないように。)

介助者の膝で本人の膝をロックします。

3)介助者は本人の頭を脇から出させ、本人の肩を介助者の腹部で受けるようにして支えます。

4)介助者の両腕を本人の背中・片側からまわし、本人の胸の前で、手のひらを本人の胸に当てて組みます。

5)介助者は脇を絞めるようにしながら、本人のお尻を浮かします。

少しずつ何度かにわけて、ベッド上を車いす側へお尻を移動させ、その後、車いすへ移乗させます。

(介助者は背を伸ばすようにして、上体を後ろへ移動させます。本人の背中は伸びるような格好になります。)

[注意事項]

・この方法では、本人のお尻が振り子のようになるために、目的位置への着座させることが難しくなる場合があります。

・移乗先へ移る際には、移乗先とは反対の膝を 押すようにして送りだすことによって、着座した際に座面に対して膝が揃い、並行に座らせることができます。(基本法、変法1ともに共通します。)