(8) 足を車いす側に近づけ、片足を少し前に出します。 足が車いすから離れていると、車いすに移乗したとき、臀部が深く座れません(仙骨座りになります)。 車いす側の足が逆の足と比較して後ろに引かれていると、回転するときにこの足がじゃまになり、下肢が十分に車いす側に移動できません。 (9) 介助者は車いすと反対側の片膝をつき、一方 の足で車いすのキャスターを押さえます。 トランスファーボードがよく滑るので、移乗時に勢いがついて車いすが移動したり、転倒してしまうことを防止するために、介助者の片足で車いすを抑えます。 介助者が裸足ですと足に傷を作る場合もありますから、注意しましょう。 (10) 介助者は片手を本人の脇の下から肩胛骨周辺をおさえ、片手を臀部(骨盤の横で少し前側)におきます。 脇の下の手は体幹を支える目的です。骨盤の斜め前の手は押して移動するためです。 この手はズボンやベルトをつかんではいけません。あくまでも添えるだけです。 (11) 本人を前傾させ、介助者にもたれかけさせます。 介助者の車いす側へもたれかけさせます。お互いの首の位置に注意してください。体幹を傾けるのに都合がよい関係になっています。 この姿勢で本人の体幹の安定を維持します。 本人は介助者にもたれかかっていますので、不安感を減少させられます。 (12) 本人の体幹をボード側に傾け(体重をボードにのせ)、骨盤を車いすの背もたれ奥に向かって押します。 脇の下の手で体幹の移動をコントロールし、臀部の手はあくまでも移動を開始するためのきっかけを与えるために、「押す」だけです。 押す方向によって車いす上での臀部の位置が決まりますから、臀部が背もたれ深く着座するような方向に押します。 「お尻を押して、回転させる」と表現してもよいでしょう。 ボードに高低差がついていれば、動き出せば後は自然に車いすに向かって移動していきます。介助者は方向を調節することに注意します。 (13) 移動途中で体幹の傾きを逆転させ(脇の下の 手とお尻の手で)、車いすまで移動させます。 脇の下の手で体幹を起こし、臀部を押せば体幹の傾きを逆転させることができます。 この作業をしないと、進行方向の臀部がボードに乗っていますから、ボードの切れ目で臀部が車いすシートに落ち、それ以上深く進みません。骨盤が車いす座面の中央まで進まない原因になります。 滑って移動していくコツを教えるときに、「本人の身体を回転させる」という教え方でもよいですが、体幹の傾きの方向によっては上述した原因で腰が深くならないことがあります。移動時の動きに勢いがあれば、体幹を傾け直さなくとも座面中央まで到達しますが、勢いがないと中央まで到達しません。ただし、後述するように後から修正することも可能ですから、あまり細かく教える必要がないかもしれません。 この手順は、脇の下の手で車いす上で壁を作れと教えてもよいでしょう。 いずれにしても、ボードにのっているお尻が進行方向の後方側に移ればよいことになります(ボードに乗っているお尻を移動開始時と反対にする)。 理由は車いすに深く着座するためです。 (14) 動きが止まったら、ボードをはずす前に姿勢を確認します。 骨盤が背もたれと平行になっているか、座面深く腰掛けているか、の2点を中心に姿勢を確認します。 姿勢がずれているときはボードを引き抜く前に修正します。 深く着座できていない場合は、体幹をボードに乗っている側に傾けて、片手で骨盤部を押して修正します。骨盤が平行になっていない場合も同様にボード上に体重をかけるようにして修正します。 ボードに体重を乗せればその滑りによって容易に移動できることを利用しています。 介助者が車いすの後ろ側から修正してもよいでしょう。 |
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3.2介助者が膝をつく方法
この方法はCDROMに具体的な手順が収録されています(8.2M) この方法は介助による座位移乗の基本的な方法です。 「本人の重心の傾け方」、「移動時の臀部と重心の関係」、「本人の足の処理」、「着座時の姿勢制御」、「トランスファー・ボードの差し込み方とはずし方」など、すべての座位移乗において留意すべきことが含まれています。 この方法は介助者が床に膝をつきます。したがって、環境の条件(施設などで床が清潔でない場合)や介助者の能力の問題(膝をつくと痛いなど)から膝をつけない場合には適用できません。 1)ベッドから車いすへの移乗 ベッドから車いすへ移乗する手順を説明します。 ベッドから移乗するとき、エアマットレスを使用している場合はエアを抜きます。極端に柔らかいマットレスの場合はボードの敷き込みが難しくなるかもしれません。 ・使用用具 車いす:アームレスト脱着ないし跳ね上げが 可能なもの。 ブレーキレバーが座面より低いないしは 脱着できるもの ベッド:昇降機能の付いているもの。 車いす座面と同等ないしは低くなるもの。 トランスファーボード:ここで使用したもの
は「イージーグライド」(ベルテックジャパン)。類似品として「MTSボード」(パシフィックサプライ)。 プラスティック製で軽く、しなりやすいものがよい。 表面が滑りやすく、裏面が適度に摩擦があるもの。 (1) 車いすのアームレスト、レッグサポートをはずします。 (2) 端座位をとります。 (3) 介助者は移動方向側の片膝をつきます。 (介助者が中腰にならないようにするために膝をつきます。 介助者が膝をつく動作をできない場合は、次節以降で記述する方法で行います。 (4)
本人の体幹を移動方向と逆の横側に、さらに前側に傾けて、介助者にもたれかけさせます。この姿勢をとると、自然に本人の片側の臀部が浮き、ボードを差し込むことができるようになります。 このとき、倒した側の下腿で本人の下腿(膝)を押さえるようにすると、本人が安定します。 本人が自分でお尻半分を浮き上がらせることができれば、当然協力してもらいます。 (5) 浮いた臀部の下にトランスファーボードを差 し込みます(お尻半分がボードに乗るように)。 移動時にお尻がボード上に乗っていれば十分です。後述するように移動時には体幹を傾けます。したがって、傾けたときにお尻の半分以下でも体重がボード上に乗る位置でよいことになります。 (6) ベッドの高さを調節します。 車いす座面と同等ないしは高めにします。本人の体幹保持能力と介助者の能力によって高さを決めます。ベッドを高くすれば移動がしやすくなりますが、介助者が小柄だと本人が覆い被さるようになり、かえって介助がしにくくなります。 また、高低差が大きいと勢いがつきすぎたり、後述する体幹の立て直し動作がしにくくなることがあります。 (7) 車いすを近づけます。 車いすの向きは必ずしもベッドに対して斜めにする必要はありません。 後述する本人を回転させて車いす上に移乗したとき、骨盤が背もたれに対して平行になる方向が適しています。すなわち、回転中心(本人の足の位置)に対して背もたれの中央が直角に向いていることが必要になります |
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