姿勢確認の方法は以下のようにするとわかりやすいでしょう。

(1)骨盤の水平:本人の両脇腹に手を当て、下げてきて骨盤にあて、水平を確認します。

(2)骨盤の前後方向:上述した手順で、骨盤が前後にずれていないことを確認します。

(3)骨盤の後傾:座っている状態で体幹を前傾させ、背もたれと臀部の隙間を確認し、腰が深く着座していることを確認します。

なお、この姿勢修正の方法はトランスファーボードを使う移乗介助に共通の方法です。

(15) ボードの端を上に引き抜くようにしてはずします。

(16) 姿勢を確認し、アームレストなどを装着します。

「留意事項」

A)本人のお尻を浮かせるときに、可能ならば「立ち直り反射」の原理を利用するとよいでしょう。本人を倒した側に手すりなどがあるとそれを利用して体幹を立て直そうとする反 射が生じます。この動きを利用するとボードを差し込みやすくなり、その後の体幹を引き起こす動作がより容易になります。

このような本人の能力を上手に使用することは、本人を「もの」として扱うのではなく、人としての特性を上手に利用することによって介助動作そのものを容易にするものであるとともに、本人や家族に与える影響も大きい。

この介助方法のすべての課程において、人の運動特性を上手に利用すれば、本人にとってもまた、介助者にとってもより適切な移乗が可能となります。セラピストの知識・技術を適切に伝達していくことを考慮すべきでしょう。

B)この介助者が床に膝をつく方法は、介助者の体格が大きくないと、やりにくい場合があります。介助者自身の重心が低くなり、本人の身体を介助者の肩で受け止めようとしても、本人が上から覆い被さってくるような状態になります。このような状態になりますと、介 助者は本人の体重を支えるのに精一杯になってしまい、ボードの差し込みや移動介助ができなくなります。

C)ベッドから車いすまでの移動を一気にする必要はありません。介助者が小柄ですべての行程を同じ姿勢ではできない場合や、本人が不安がるようなときは動作を区切りながら、ゆっくりやってもよいでしょう。座位で移動していますから、安定しています。ただし、途 中で止まるときはボード上では滑りやすいですから、うっかりすると本人が前に滑り落ちることがあります。前方への指示をしっかりすることを忘れないようにしましょう。

(2)車いすからベッドへの移乗

この方法はCDROMに具体的な手順が収録されています(3.6M)

車いすからベッドはほぼ同一の手順になります。異なる点のみを以下に説明します。

移乗後の姿勢を考えなくてよいことから、ベッドから車いすへ移乗するよりも容易になります。

使用している車いすが後輪大車輪の場合は、最初に本人の腰を前に出して浅く座らせると、後の介助動作が容易になります。これはボードを臀部に敷き込んだとき、ボードが後輪に乗り上げて平らにならなかったり、ボードが本人の膝裏に当たってしまうことを防止するためです。

(1) ボードの差し込み

車いす上では一般にクッションを使用しています。このクッションがエアセル式であったり、柔らかいクッションの場合にはボードが差し込みにくくなります。

体幹を傾ける側のアームレストもはずし、傾きを大きくすると差し込みやすくなります。しかし、きちんと体幹を支えられないと転倒の危険もありますから、注意しましょう。

(2) 移動

車いすからベッドへ移乗する際、ボードを差し込んでみますと、ベッド側が下がらず、逆に上がっています。これは車いすのフレームと座面シートの関係から、車いすフレームのほうが高いために、このフレーム分の高さを超えなければならないことになります。介助者によってはこの部分を越えさせるだけの力がない場合があります。

このような場合には介助者が立位で移乗介助する方法の方が容易ですから、方法を変更します。

(3) 着座時の姿勢

ベッドへ移乗するときは、車いすへ移乗するときと比較して、着座時の姿勢を厳密に考える必要がありません。その意味では、介助動作は少し楽になります。