.3介助者が立位で介助する方法 

床に膝をつくことができない環境や介助者の場合、また介助者が本人と比較して体格が小さい場合、介助者が立位での移乗介助に慣れている場合、車いすからベッドへの移乗に力が必要な場合などにこの方法を使用します。

立位で移乗介助するということに慣れている介助者が多いので、そのような介助者には受け入れられやすい方法といえるでしょう。

いくつかのバリエーションがあり、それぞれ条件に応じて使い分けたり、工夫したりします。

1)ベッド上端座位から車いすへの移乗

(1)介助者立位の基本形−1

この方法はCDROMに具体的な手順が収録されています(2.1M)

(1) 車いすのアームレスト、レッグサポートをはずします。

(2) 端座位をとります

(3) 介助者は本人の斜め前に立ち、介助者側に本人を傾けさせて、反対側のお尻を浮かせ、トランスファーボードを敷き込みます。

(4) 車いすを近づけ、本人の足を整えます。(車いすとベッド端座位との中間点で車いすよりに)

(5) 介助者は片足で車いすキャスターを押さえ、片足で本人の膝を外側から押さえます。

(6) 本人の両脇の下に手を入れ、肩甲骨にかけて当てます。

(7) 本人の体幹を車いす側に傾け、ボード上を滑らせます。
決して本人を持ち上げるように力を入れてはいけません。あくまでもボード上を滑らせるように、斜めに身体を引きずる要領です。


(8) このとき、介助者は外側の膝で本人の膝を送り込むようにします。

(9) 車いす上で体幹を反対側に傾けて、正確に着座させるようにします


(10) いす上で止まったら、ボードを引き抜く前に姿勢を確認します。

この手順は前述した「介助者が膝をつく方法」と同じですからそちらを参照ください。

[留意事項]

A)車いすに着座したとき、腰が浅くなりがちです。「介助者が膝をつく方法」ではきちんと腰を深くできたのに比較して、どうしても浅くなります。移乗後の姿勢修正に特に気をつけましょう。

B)移動動作を一度にする必要はありません。途中で介助者の位置を変える必要がある場合など、何回かに分けて移動してもよいでしょう。ただし途中で止まったときは本人が前に滑りやすくなっていることに注意しましょう。

C)体重を移動させるとき、決して持ち上げないようにしましょう。特に専門職の場合には持ち上げることに慣れているので、ついつい持ち上げる動作をします。本人にとっても、介助者にとってもこの姿勢で持ち上げることは 決してよいことではありません。ボード上を滑らせて身体を移動させるという特徴を十分に理解しましょう。

(2)介助者立位の基本形−2

前述した方法と異なる点のみ記述します。
(1) 介助者の両膝で、本人の両膝を外側から挟んでロックします。車いすのキャスターはおさえません。

(2) 移乗側の手は脇の下に、反対側の手は腰(の横)に当てます。

(3) 本人を移乗側へ傾けさせながら、腰を押してトランスファーボード上を滑らせます。

(4) 移乗の最後に、介助者の膝で本人の膝を押すようにして(送り膝を使って)深く座らせます。

移乗先側との高低差(移乗側が低いこと)がある程度必要です。
介助者の両膝で本人の膝をはさんでロックさせるのは、介助者が膝を曲げて腰を下ろすような姿勢を作ることによって、介助者の腰を曲げないようにし、身体を守るためです。

(3)応用型−もぐり込み方式

この方法は2章で説明した「膝固定による介助移乗」とトランスファーボードとを組み合わせたものです。2章では介助者が自分の体重を利用して振り子の原理で本人の臀部を浮かせてから移乗していましたが、本方法では介助者の臀部を浮かせずに、ボード上を滑らせて移動するものです。

(1) 車いすのアームレスト、レッグサポートをはずします。
(2) 座位をとります

(3) 介助者は本人の斜め前に立ち、介助者側に本人を傾けさせて、反対側のお尻を浮かせ、トランスファーボードを敷き込みます。

(4) 介助者の両膝で、本人の両膝を外側から挟んでロックしますす。

(5) 介助者は本人の頭を脇から出させ、本人の肩を介助者の腹部で受けるようにして支えます。

(6) 介助者の両腕を、本人の背中・肩から回し、本人の胸の前で、手のひらを本人の胸に当てて組みます。