[失敗の原因]
吊具が深く差し込まれない→吊り上げたとき臀部が落下しやすい
吊具の中央が背骨と一致していない→吊り上げたときからだが傾く.
介助者は前に回って膝をつき、吊具の脚部を装着します。
介助者の身体を痛めない、誰にでも比較的簡単に学習できる介助方法は現状ではホイスト以外ないといえるでしょう。しかし、ホイストは手間も、時間も、お金もかかります。
このとき、片手の手のひらで本人の大転子あたりを内側に押さえ、片手で吊具の下側ストラップをもって手前に軽く引きます。
吊具がお尻をきちんと覆うようにしてください。
[失敗の原因]
吊具がお尻を覆っていない→吊り上げたとき臀部が落下する
左右とも同じことをします。
両方の吊具が同じ長さであることを確認してください。
もし均等でなかったら、慣れない場合は最初からやり直します。(脚側の吊具を引っぱって修正しようとすると、本人のお尻を前方へ引きずりだしてしまい骨盤を後傾させてしまうことになる。)
・プロに対しては、以下のもう一動作を加えます。
(家族にこの方法を実行する能力がある場合や、股関節の固定力が小さく臀部が落下しやすい場合にも加える。)
1) 吊具が股関節をしっかりと覆うために、脚部の吊り具の下側のストラップを膝裏くらいのところを小指から人さし指にかけて持つ。
2) 親指を伸ばし本人の膝に当てる。
3) 膝に当てた親指を支点にして引き絞るようにしながら、吊り具が臀部の下に滑り込むような動作を行う。(親指は膝から離さないこと。)
大腿を軽く持ち上げて、吊具を通します。
またの内側から吊具を出したら、両手で布を張るようにしてしわを作らないようにします。吊具は膝側ではなく、股の付け根側にくるようにします。
股関節の外転をしない方がよいような身体機能の場合には特にこの段階でしっかり吊具を引っ張っておきます。
できたら大腿の上に吊具を広げておきます。
・講習会やヘルパーに対しての指導の場合には、「膝をついた介助者の腿の上に本人の足をのせるように」指導する。
理由は;
a)介助の際には必ず膝をつき腰を下ろすことによって介助者自身の身体を守ることを習慣
化させる。(中腰での作業をしない。)
b)大腿部の下に空間ができ、吊具を通しやすくなる。
・家族に対しては手間が多くなるので、基本的にはここまでは教えない。ただ「吊り具を脚の下を通してください。」とだけ伝える。
両側同じことをしたら、再度吊具の長さを確 認します。
[失敗の原因]
・長さが異なっている→吊り上げたとき、身体が左右に傾く
・吊具を交差させ、ハンガーに掛けます。
このとき、必ずハンガーを片手でもって吊具をかけます。ハンガーから手を離すとハンガーが回転して本人の顔などにぶつかることがありますし、恐怖感を与える原因になります。
・すべての吊具をハンガーに掛けたら、スイッチを押して吊り上げます。
このとき、スイッチは少しずつ押して、様子を見ながら注意深く吊り上げます。
・怖がっている場合や嫌がっている場合には、ここから先が問題になります。
1)「これから吊られていくぞ」ということをあまり意識させないこと。(気をまぎらわせること。)
2) スキンシップでいくかアイコンタクトでいくかを相手によって選択する。
スキンシップ:身体に触れながら、余分な世間話などをしながら進めていく。
アイコンタクト:本人の前に膝をついて腰を下ろし、本人の目を見ながら操作を行う。
3) インチング(スイッチを小刻みに押して、少しづつ上げ下げすること)操作をおこなう。
ただし、人によってはインチング操作を嫌が る場合もあるので、その時には吊具にある程度張力がかかるまでは一度に上げてしまう。その後インチング操作で吊り上げていく。
・股関節疾患を持っていたり、この吊具で大丈 夫かどうか明確でない場合には、関節の具合や顔の表情などで痛みがあるかどうかを確かめながら少しづつ吊り上げていく。
・吊り上げたら、上腕部を前に引き出します。
この作業は吊り上げられたとき、吊具で上腕部が左右に圧迫されているのを解除する動作です。短い時間しか吊り上げていないときは省略してもかまいませんが、初めて吊り上げたときや圧迫感を訴える場合には必ずこの作業をしてください。
吊り上げたら、お尻を確認してください。
図のようにきれいにお尻が覆われていたら
OKです。
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